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リレー日記

Beat 海洋

投稿日時:2017/12/28(木) 17:21

   蛇口が回せない。なんでこんなに痛いんだろう。



部屋の中の扉に掛けられたお気に入りの日めくりを見る。可愛い顔をしたお地蔵さんが毎朝僕を待っている。



13日

“感謝

感謝

すべてに感謝”



あとちょうど3ヶ月で22歳。ウソだろ笑。グラウンドで4年間過ごしただけじゃないか……



はじめのうちは毎日めくられていたこの日めくりも、1週間タイムスリップしてみたり、逆回転したり、僕の心の写している気がする。



昨夜寝る前には、きちんと、日にちが変わっているのを確認して、ひとつめくっておいた。





だんだん部屋の中に光が差してくる。僕が大好きな朝の感じとは少し違う。いつもならもっと明るい。



コップに入った一滴も飲まれなかったままのお茶がティーパックを浮かべたまま部屋の真ん中の机の上で冷たくなっている。



窓から差し込むだんだん光が弱くなり、そしてまた少し強くなり。しかし、気分が晴れるほど明るくはなってくれない。薄着のまま外に出て洗濯に行こうとはなかなか思えない。いつもなら朝練のついでに洗濯機を回していた。





ラックの上に置かれた写真たてが先ほどから目に入る。つい先日実家に寄った時になぜか自分の机の上から拾ってきた。八王子東高校サッカー部36期。ここに自分のアイデンティティを求めたことは今までなら一度もなかったのに。



フレームの前にはアメジストのキーホルダーがちょこんと座っている。この誕生石には何か運命的な出会いを感じた。僕の強い味方になってくれるのだろか。





次にここに収まるのはきっと…。引退した実感が湧くまでは無理だろう。



そして、扉の裏側にはダンボール箱が1つ。



今度は少し冷えてきた。朝起きた時、家を出る時、寒くても窓を開けっぴろげることが多いのだが、だんだん部屋の中は冷えてくるのに、意地を張って閉めようとしない。しばらくキャビネットの中にあるカラーボックスに肘を掛けている。



部屋を見渡しても何か今の自分を助けてくれそうなものが見つからない。早すぎた。





昨日から何度この言葉を口にしたのだろうか。



汗をかいていたことに気づき、また布団にもぐり込む。



   リレー日記をご覧の皆様、こんばんは。スペイン語科4年の井出聖峰です。最後まで更新遅くて大変申し訳ありませんでした。最後のリレー日記です。

   引退が決まった次の朝、忘れないように綴っておいた自分の気持ちだ。こんなに虚無感に襲われたことは私の人生に一度もなかった。これまでに2回部活動を引退したことがあったが、その時にはすぐにやるべきことが迫っていた。

   ノーサイドの笛の後べンチに戻ってきて、後輩たちが涙を流していた姿は一生忘れられない。負けたことがどれほど大きかったか気付いたのはその時だった。3回目の引退の実感はその後もしばらく湧かなかった。



常に出来ないレベルで



   こうやって振り返ることはあまりしたくない。新しくなったチームでこれまでできなかったことをどんどんやってほしい。これでもかというくらい練習して、馬鹿みたいにやって、木和田にこんな練習いつまで続けてるですかっていうくらいの気迫と心意気を伝えないといけない。まだまだ下手なチームなんだから、同じ場所にとどまっていたらいけない。常に個人個人が出来ないレベルの練習をしないといけない。できることなんかやる必要ない。もうできるんだったらタックルをあと50センチ低くする。



先ずは素直にやってみる。でも常に疑問を持つ。



   1人1人が最高のフォローワーになることが必要。リーダーシップを発揮できるやつはいくらでもいるけれども、全員が謙虚に直向きにスキルを吸収して、その上で変だと思ったことはそのドリルにどんどんケチつけて、相互に考え尽くす環境を作らないといけない。1人のキャプテンやヘッドコーチよりも、その他全員の力の方が絶対大きいに決まってる。全員が最高のフォローワーになることが良いチームを作るのには不可欠。



Beat 阿部



   もっとハングリーな気持ちが必要だと思う。練習中のチームメイトは全員敵。1年生の時にどうしても阿部さんを倒したかった。だからずっと阿部殺すって口に出しながら練習してた。目標を設定して、それを周りに言うことは大事。雅史、恩地、裕助をはじめ、マッチアップした後輩のみんなからは憎しみなのか感謝なのか分からないけど最高のプレゼントをもらったと思う。すごく嬉しかった。とりあえず誰か雅史をやってしまって下さい。無理矢理でもいいから、相当高い目標設定を。



Beat海洋



   最後に、僕はこのチームが大好きです。



   海洋を倒すと言う目標もまだよく分からないままついてきてくれた2年生、本当に楽しそうに部活をやってくれてありがとう。成長スピードは素晴らしく早いけれども、まだぜんぜん下手くそです。前の主将もパスが下手だったからとか言い訳を探すことなく、毎日成長して下さい。



   3年生は遼を中心に雰囲気でもプレーでもチームを支えてくれありがとう。遼を中心になんて言ったけど、全員遼を黙らせるくらいのプレーヤーになってくれ!



   4年生は愚直に支えてくれてありがとう。不器用なところも多いと思います。やってる姿勢を見せるのではなく、常に結果を出し続けなければいけない。そのための努力は今よりもっともっとたくさんしてください。自分を褒めるのではなく、叱責しながら勝つチームを作ってください。



   マネージャーのみんな、本当にお世話になりました。とても感謝しています。チームを良くしようと新しいことを沢山取り入れてくれてた先輩と、必死に仕事を覚えていこうとする後輩とでとてもよく連携が取れていたと思います。もし万が一、チームに緩んでいる雰囲気があったり、規律が守られてなかったりしたら、その時は強くお尻を叩いてやって下さい。



   選手の皆さん、一番近くで応援してくれて、一番チームの勝利を喜ぶのはマネージャーのみんなです。勝ちたいという気持ちは選手と同じだけど、自分たちはプレーできない。その気持ちを選手のみんなに託して日々サポートしています。違っていること、やってほしいことはちゃんと伝えて下さい。そして感謝の気持ちを必ず口に出して伝えて下さい。



   時間はあっという間に過ぎます。ちなみに国公立戦まであと5ヶ月、シーズンインまで9ヶ月です。東大、都市大、海洋大、学芸大。Beatしないといけない相手は沢山います。常に、できることを、し尽くし続けてください。



   これまで応援してくださった皆様、一緒に戦ってくれた先輩方、同期、後輩のみんな、本当にありがとうございました。僕は東京外大ラグビー部に入ってとても幸せでした。また会いましょう。

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