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リレー日記 2022/3

生き溺れても、また春に会いましょう

 written by 大沼 六旺 投稿日時:2022/03/11(金) 23:59

ついに引退日記を書く日がやってきてしまいました、大沼です。まずは同期プレイヤーによる理外の超低速リレーにより僅か4人で3ヶ月を喰うという惨事を招いたこと、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。平川新リレー日記隊長に合わせる顔がありません……。これもまた一長一短だけれども、最後までのんびりと締まりの悪い代でしたね。

 光陰矢の如しとはよくいったもので、(少なくとも僕にとっては)涙のリーグ戦最終試合はもう遥か昔に感じられます。最終学年として駆け抜けた1年間は非常にストレスフルながらもこの上なく充実したものでした。コロナウィルスによる練習中断や定例行事の中止などで苦しい時期が続きましたが、各部員の自助努力、監督やコーチ、そしてOB・OGの皆さまのご協力により新リーグに移行して初めての年度で3位という結果を納めることができました。昇格という目標こそ果たせなかったけれど、皆で過ごした日々に寸毫の悔いもありません。後輩の皆なら来年こそ必ず来昇格してくれると信じています!頑張って!

2022.3.11 大沼六旺



などと素直に書いて終わりたかったところでございますが、実際の胸中には巨大なしこりが蟠踞しています。

あれは今年の2月初頭のこと、ラグビー部を引退した私は趣味として再開したスノーボードに必要な品々を購入しにショップが林立する神田小川町に足を運びました。物欲も満たされ、ついでに神田の美味しいラーメンも食し、気分良く御茶ノ水周辺を散策しているとある建物が視界に入ってきたのです。途端にそれまでの爽快な気分は影を潜め、なにやら怒りとも後悔ともつかない不快な感情が去来しました。立派なキャンパスに掲げられた順天堂の3文字は、僕に10月の敗戦を想起させるには十分過ぎたのです。

 過ぎたことにやきもきすることの不毛さは十分に理解しているつもりです。しかしこのときのみならず、折に触れてシーズンへの未練がふつふつと湧き出てきてしまいます。

敗戦は異論を挟む余地のない正当なコンテストの結果ですし、社会情勢による制約などはどのチームも平等です。怪我人などはいかんともしがたいことですし、さらにいえば限られた時間や部員のなかでこのチームはよくやったとすら思っています。もしかしたら何の結果も知らないまま過去に戻ったとして、我々は実際にした以上の準備はできないかもしれません。しからば何故釈然としないのかというと、チームとしてではなく僕自身の尽くした人事があまりにもお粗末だったことへの失望があるからです。

 例えば新歓期に裏で恥も外聞もかなぐり捨てて勧誘しておけば多人数で質の高い練習ができたかもしれません。しかし現実は大学のレギュレーションに完全に沿っていましたし、そもそも人見知りなのでそこまでグイグイ勧誘できませんでした。

例えば春のコロナでの休止中に部費でジム代を賄い、相対的に筋力が弱い部員の筋トレの管理を徹底してフィジカル強化に腐心すればより強いチームになったかもしれません。しかし現実は押しが弱いのでジム代の説得は程々で諦めてしまいましたし、本心では活動時間外のことは管理しようとしても個人の意欲に依存してしまうので無駄だと思ってしまっていました。

 極め付きは、シーズンの後半に遼さんに言われた「ラグビーの本を読むだけじゃなくて、試合たくさん見てちゃんと勉強しなよ」という言葉が表す通りのラグビーに対する姿勢です。スポーツを学ぶ端緒としては優れていても、書籍での学習に終始していたのははっきりいって怠慢でした。生のラグビーを常食しなければゲーム勘は培われません。プレイすることは大好きですが、結局マクロとしてのラグビーへの愛が甚だしく欠如していたのでしょう。シックスネーションズで各チームの戦略を考えながら観戦するより、youtube の切り抜きでサヴェアのコンタクトを観る方が本音は好きなのです。だから他人が体系的にまとめたものに依存してしまいました。曲がりなりにもチームの戦略や練習メニューを構築する立場、即ち他者の人生の時間の使い方を多少なりとも決定する立場にあった以上更に責任感をもって臨むべきでした。

 探せばまだまだありそうです。ただ、それらのこと全てが順天堂そしてそれに続く入れ替え戦にさえ勝利していれば自身の中で一切問題になりませんでした。関東大学リーグ4部昇格、大学ラグビーの中でお世辞にも高い目標とはいえません。しかしその山すら未踏のままです。勿論集団スポーツですので、自分の行動に結果が完全に左右されると思うほど傲慢ではありませんが、順天堂戦をひっくり返しうる何かはチームに足せたのではないかと思ってしまいます。

 部員が各々なにを目的にしているかは分かりません。「楽しく怪我なく仲間と過ごすこと」が一番の目的ならば、それはそれでいいと思います。心から。ただもし「所属するリーグで一番のプレーヤーになる」とか「国公立戦で学芸大に勝つ」とか「ラグビー部のInstagramのフォロワーを1万にする」とか何でもいいのですけれど、自分にとって大きな山を目標に据えた場合、それを心底希求してしまった場合、即した努力を払う必要があるのではないでしょうか。その支払いが不十分だった上に失敗してしまえば、自分の中にクソみたいな言い訳がこびりついてしまいます。痛感するのは、目標の達成ないしは完全に力を尽くしたという実感のみが道のりを肯定してくれるということです。

 何やら持って回った言い方になっていますが伝えたいのは要するに、「この部活動をする上で自分が達成したいことを明確にして、その目標に対して悔いのないようにしてね」という凡庸極まりないことです。けれども自分が何を求めているのかということを自覚するのは存外難しい気がします。僕も楽しければいいと思っていたのですけども、実はかなり昇格を果たしたかったみたいです。後輩の皆さんは自分の欲しいものを自覚して、灰も残らないくらい燃焼してくださいね。



後悔は散々書き連ねたので、これからは締めに入らせてもらいます。

前述の内容から部活動に満足しないで引退したと誤解されそうですが、端的にいって東京外大ラグビー部で過ごした時間は自分にとって望外の財産と思っております。本当に豊かで充実した時間を与えてくれました。入学前は年齢や経歴から、まさか自分が体育会系の部活に入ることになるとは考えもしませんでした。深澤くんに新歓に誘われず、歯車がずれてラグビー部に入らなければこの4年、一体僕は何をしていたのでしょう。そんな想像が何もできないほど、この部活動はここ数年のメインコンテンツでした。トッポの中のチョコみたいなものです。

 僕は小学生5年のときに週1回のお遊びラグビーを始め、中学校で本格的な部活動に加入しました。当時の自分は背がとても低く、また運動神経もお世辞にも良いとはいえなかったので(今もパスとかクソ下手ですが)ラグビーが楽しいとは思えませんでした。また入部当時の中3の先輩はその内2人が現役のトップリーガーになっている黄金世代で、上手くて強い人に毎日バチボコにしばかれていました。180cmと150cmを同じカテゴリーに入れないでください。その上東海大ラグビー部出身の顧問の先生がクソ怖く、遅刻しては蹴られ、授業中漫画読んではパイプ椅子を投げられと、非常に憂鬱な日々を送っておりました。モヒカンにして登校した日はトサカを掴まれ体育館の隅から隅へ引きずられましたね。忘れないからな!まあ今思い返せば全部自分が悪い気もしますが。

 そんな日々の中、脳震盪と骨折が立て続けに起こり、それを言い訳に意気揚々と中2でラグビー部を退部しました。そこからは体育会的な価値観は冷笑するサブカル少年の出来上がりです。ただ同期が中高6年間をやりぬき、一個下の代は花園予選決勝に行くなどを横目で見るなどし、その輝かしい青春に恐らくコンプレックスがありました。いつかこの後悔を淘汰できれば良いと思っていたところ、この部活が登場したという次第です。本当にありがとうございます。おかげさまで大沼少年は成仏しました。



本当なら関わった部員全員に2000字ずつくらいの手紙を送りたいです。しかしもらっても困ると思うので、ここで適当に感謝の辞を述べるにとどめておきます。

 まずお世話になった先輩方、皆さんがいなくなった後の飲み会は寂しかったです。最近の若い者はなっていないのでOBの皆さんからご指導の程よろしくお願いします。難しいところもあったと思いますが、タイムスリップ新入生をすんなりと受け入れてくれて嬉しかったです。

親愛なる同期は個別に行きます
 桂士くん。黒い。献身的な姿勢でチームを引っ張りました。でも隠し事が多い。
 竣介くん。狭い。今年のFWのまとまりは君のおかげです。後ゲームが上手い。
 悠くん。デカい。長年にわたりチームの心臓でしたね。タイで性転換しているころかな?
 セレネちゃん。情緒激しい。同期スタッフ1人で職務をやり抜いたこと尊敬します。ご褒美にKPOPアイドルの旦那さんをプレゼントしたいところです。
 辞めていった全ての同期たち。馬鹿野郎。
 これら全て偽らざる本心です。皆さんのおかげで本当に楽しい4年間でした。窪田を筆頭に人格に難ありと言われがちですが、個人的には最高の逸材しかいません。これからも仲良くしください。

 3年生プレイヤーは数が少ない同期に変わりチームの中心として機能してくれましたね。本当にありがとう。元々センスと実力に恵まれている子ばかりの代なので、今年の経験を適切に活かしきれば近年稀に見る強いラグビー部になれると思います。昇格は確実だと踏んでいるので、内容にもこだわって圧勝で行きましょう。後怪我のないように。
  3年生スタッフは一緒に引退したので思い入れも強いです。フニャフニャな4年に代わりチームを締めてくれありがとうございました。この2、3年くらいでマネージャーからスタッフへと呼称が変わるだけでなく、職務内容も従来のマネージャー業から進歩しましたね。皆さんの努力の成果だと思います。本当にお疲れ様でした。

 2年生は僕たち以上に少数精鋭なので大変ですね。上田くんは引き続き外大のイージス艦としてトライラインの防衛に務めてください。和田ちゃんは今年以降が本番、俊足を大爆発させるときが来ましたよ。なぎちゃんはラグビー部の君主(副務)として周りに適切な指示を下し、素晴らしい治世を作ってください。期待しています。

 1年生の子たちは個々の能力が皆めっちゃ高いので安心して見ていられるんですよね。4−1の後輩は一番かわいいので心の中で全員舎弟扱いしています。本当に入部してくれてありがとう。ガキどもと遊ぶのも嫌いじゃないからいつでも声かけてね。



 思いのままに書いていたらいつの間にか大作が出来上がっていました。これはリレー日記最長記録更新なのではないでしょうか。このまま5倍くらい書き続けるので、卒業論文として受理していただきたいところです。

2022.3.11 92期ラグビー部主将 大沼六旺
 

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